「ラからはじまる」作品一覧・ウィキ@ぴあ映画生活

Date: 2018-01-04 15:45

秦早穂子さんが、ジャン=リュック・ゴダールという未知の新人監督の『息切れ』のラッシュフィルムを見ただけで、世界最初に買い付け、自ら『勝手にしやがれ』と名づけた伝説的なエピソードは、『影の部分』でも微妙にトーンを変えて鮮やかに再現されているが、試写室で、猛然とゴダールにくってかかる秦さんの姿を思い浮かべるとやはりすごいなと思ってしまう。

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 <不安>や<愛の欠如>に深くとらわれた時に、その人間たちはどのような行為に及ぶのか。そして、彼らの視界に映る世界はどのような様相を呈するのか。シャブロルはその酷薄で仮借ない世界の表情そのものを、あたかも顕微鏡でながめるように冷徹に、ときにはユーモラスに、ときにはポエティックにドキュメントしてきたのではなかったろうか。

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 しかし、はたして『ヨシワラ』は、そんなにひどいゲテモノ映画なのか。
 たしかに、日清戦争前夜を背景に、吉原に身売りした小花(田中路子)とロシアの海軍将校との恋愛を描く、この映画は、主役以外は、ほとんど西欧人が不似合いなチョンマゲ・キモノで登場し、一見、フジヤマ・ゲイシャ・サムライの異国趣味を強調した『蝶々夫人』の俗悪なパロディのようだ。
 だが、監督のマックス・オフュルスは、マックス・ラインハルト門下の逸材で、舞台・オペラ演出でも際立った才能を発揮した演出家である。オフュルスは、ウィーン国立音楽学校を卒業し、二十三歳の時にグラーツの市立オペラ劇場で『蝶々夫人』でデビューし、華々しい脚光を浴びた田中路子のことを知らないはずはない。田中路子は全篇、フランス語で台詞を喋り、美しい歌も聴かせるのだ。
『ヨシワラ』は、ビア樽のお風呂で入浴する芸者たちをレヴュー仕立てにするなど、唖然とするような珍景もあるが、『蝶々夫人』と同じく、愛に殉じた女の悲劇を主題にしているのである。

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『母のおもかげ』は、母を病いで亡くし、水上バスの運転手の父親(根上淳)とふたり暮らしの少年・道夫が主人公である。父に縁談が持ち上がり、小さな少女を連れた新しい母(淡島千景)が家にやってくる。少年は、美しい継母への仄かな思慕と、それゆえに湧き起こる亡くなった実母への後ろめたさの感情の間を揺れ動く。

 すぐさま、マキノ監督の自宅に伺い、企画の趣旨を説明すると、ご快諾をいただいた。ちょうど、その年の湯布院映画祭で、生誕八十周年を祝って大規模な「マキノ雅広特集」を開催するというので、まずは、私が陣頭指揮を執り、プロのスタッフを使って、この映画祭の模様を完全ドキュメントすることになった。

 昔から、ずっと気になっている一本の映画がある。『夜明けの約束』(75)というジュールス・ダッシン監督の作品で、主演はもちろんメルナ・メルクーリだ。当時の『映画評論』誌で作品評を読んだ記憶があるのだが、未公開作品の扱いで、どうやら字幕入りのままオクラになったらしい。
 なぜ見たいのかといえば、これがロマン・ギャリの自叙伝の映画化だからである。

 伊丹さんは、その翌年、89年に『お葬式』で監督デビューする。『お葬式』は『キネマ旬報』のベストワンを始め、映画賞を総なめにして、興収十五億を超える記録的な大ヒットとなった。しかし、伊丹さんがもっとも称賛を期待したであろう蓮實さんは、最初の試写の際、本人の前で作品を酷評し、以後、ふたりが言葉を交わす機会はなかった。

 相米さんとは、別に、それほど親しかったわけでもないのに、訃報を聞いた時には、なぜか説明のつかない、すさまじい喪失感に襲われ、通夜、告別式と出てしまった。
 告別式では、当時、まだ、かろうじて元気だった今村昌平監督が、愛弟子である長谷川和彦がとても世話になったこと、『魚影の群れ』がいかに素晴らしかったかを、淡々と弔辞で述べていたのが記憶に残っている。あ、そうだ、大勢の参列者のなかにTBSの伝説的な深夜放送パック・イン・ミュージックのDJだった林美雄さんを見つけて、なつかしさのあまり、思わず声をかけたことを思い出した。
 林さんもその翌年、胃癌で亡くなってしまったのだ。まさに往時茫々。

 私は、数年前、『ものみな映画で終わる 花田清輝映画論集』(小社刊)を編集した際に、一度、御自宅に出版の許諾のお願いも兼ねて、ご挨拶にうかがったことがある。
 花田清輝のエッセイによく登場する小石川の住宅街にひっそりとある瀟洒なご自宅で、黎門さんからお聞きした生前の花田清輝をめぐるエピソードがゆくりなくも記憶の底からよみがえってくる。 

それか、あらぬか、やはり『映画芸術』の六〇年五月号では、「映画の性とモラル」という特集が組まれ、戸井田道三の司会で、「映画にあらわれた?性?の問題」というテーマで、石原慎太郎、白坂依志夫と秦さんが鼎談しているのも際立って印象的だ。フランス本国で公開禁止だったロジェ・ヴァディムの『危険な関係』や『墓にツバをかけろ』『青い牝馬』などを話題にしながら、当時、人気絶頂の気鋭の若手作家、シナリオライターを相手にまったくひるむことなく丁々発止の議論を戦わしている秦早穂子さんは、とてもチャーミングである。